運営基準とは、適切なサービスを提供するにあたって行動援護事業者が行わなければならない事項や留意すべき事項など、事業を実施する上で求められる運営上の基準です。
東京都では、下記33項目の行動援護の運営基準を設けています。
1 内容及び手続きの説明及び同意
・事業者は、利用申込者の障がいの特性に応じた適切な配慮をするとともに、利用申込者に対し、重要事項を記した文書を交付して説明を行い、提供の開始について同意を得なければならない。
2 契約支給量の報告等
・事業者は、サービス提供に係る契約が成立した時は、利用者の受給者証に事業者及びその事業所の名称、サービスの内容、利用者に提供する月当たりのサービス提供量、契約日等の必要な事項(受給者証記載事項)を記載しなければならない。契約に係るサービスの提供が終了した場合にはその年月日を、月途中で終了した場合には当該月で既に提供したサービス量を記載すること。
・契約支給量の総量は、支給決定障がい者等の支給量を超えていないこと。
・事業者は、サービスの利用に係る契約を締結したときは、受給者証記載事項その他の必要な事項を区市町村に遅滞なく報告すること。
・事業者は、利用変更をしたときは、受給者証記載事項その他の必要な事項を区市町村に遅滞なく報告すること。
3 提供拒否の禁止
・事業者は、正当な理由がなく、サービスの提供を拒んではならない。
4 連絡調整に対する協力
・事業者は、サービスの利用について区市町村・一般相談支援事業・特定相談支援事業が行う利用者の紹介、地域におけるサービス担当者会議への出席依頼等の連絡調整等に、サービスの円滑な利用の観点から、できる限り協力しなければならない。
5 サービス提供困難時の対応
・利用申込者に対し自ら適切なサービスを提供することが困難であると認めた場合は、適当な他の事業者等の紹介その他の必要な措置を速やかに講じなければならない。
6 受給資格の確認
・サービス提供開始の際には、受給者証によって、支給決定の有無、有効期間、支給量等を確かめなければならない。
7 介護給付費の支給の申請に係る援助
・支給決定を受けていない者から利用の申込みがあった場合は、その者の意向を踏まえて速やかに介護給付費の支給の申請が行われるよう必要な援助を行わなければならない。
・支給決定に通常要すべき標準的な期間を考慮し、支給決定の有効期間の終了に伴う介護給付費の支給申請について、必要な援助を行わなければならない。
8 心身の状況等の把握
・事業者は、サービスの提供に当たっては、利用者の心身の状況、置かれている環境、他の保健医療サービス又は福祉サービスの利用状況等の把握に努めなければならない。
9 指定障がい福祉サービス事業者等との連携等
・事業者は、サービスの提供に当たっては、地域及び家庭との結び付きを重視した運営を行い、区市町村、他の障がい福祉サービス事業者等、その他の保健医療サービス・福祉サービスを提供する者等との密接な連携に努めなければならない。
・事業者は、サービス提供の終了に際しては、利用者又はその家族に対して適切な援助を行うとともに、保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との密接な連携に努めなければならない。
10 身分を証する書類の携行
・事業者は、従業者に身分を証する書類(証書や名札等)を携行させ、初回訪問時及び利用者又はその家族から求められたときは、これを提示すべき旨を指導しなければならない。証書等には、事業所の名称、当該従業者の氏名の記載があること。
11 サービスの提供の記録
・サービスを提供した際は、サービスの提供日、内容その他必要な事項を、サービスの提供の都度記録しなければならない。
・記録に際しては、支給決定障がい者等からサービスを提供したことについて確認を受けなければならない。
12 支給決定障がい者に求めることのできる金銭の支払の範囲等
・事業者がサービスを提供する支給決定障がい者等に対して金銭の支払を求めることができるのは、金銭の使途が直接利用者の便益を直接向上させるものであって、かつ当該支給決定障がい者等に支払を求めることが適当である場合に限られている。曖昧な名目による不適切な費用の徴収を行っていないか。
・金銭の支払を求める際は、金銭の使途及び額並びに支給決定障がい者等に金銭の支払を求める理由について書面によって明らかにするとともに、当該支給決定障がい者等に対し説明を行い、その同意を得ていること。
13 利用者負担額等の受領
・事業者は、サービスを提供した際は、支給決定障がい者等からサービスに係る利用者負担額の支払いを受ける。
・法定代理受領を行わないサービスを提供した際は、支給決定障がい者等からサービスに係る指定障がい福祉サービス費用基準額の支払いを受ける。
・通常の事業の実施地域以外の地域においてサービスを提供する場合は、それに要した交通費の支払いを受ける。
・費用の額の支払いを受けた場合は、費用に係る領収証を支給決定障がい者等に対して、交付しなければならない。
・通常の事業の実施地域以外の地域においてサービスを提供する場合に要する交通費については、あらかじめ支給決定障がい者等に対し、説明を行い、同意を得なければならない。
14 利用者負担額に係る管理
・事業者は、支給決定障がい者等の依頼を受けて、支給決定障がい者等が同一の月に事業者が提供するサービス及び他の指定障がい福祉サービス等を受けたときは、当該サービス及び他の指定障がい福祉サービス等に係る指定障がい福祉サービス等費用基準額から当該サービス及び他の指定障がい福祉サービス等につき支援法第29 条第3項の規定により算定された介護給付費又は訓練等給付費の額を控除した額の合計額(利用者負担額合計額)を算定していること。この場合において、事業者は、利用者負担額合計額を区市町村に報告するとともに、支給決定障がい者等及び他の指定障がい福祉サービス等を提供した障がい福祉サービス事業者等に通知していること。
15 介護給付費の額に係る通知等
・法定代理受領により区市町村からサービスに係る介護給付費の支給を受けた場合は、支給決定障がい者等に対し、支給決定障がい者等に係る介護給付費の額を通知しなければならない。
・法定代理受領を行わないサービスに係る障がい福祉サービス等費用基準額の支払を受けた場合は、サービスの内容、費用の額その他必要と認められる事項を記載したサービス提供証明書を支給決定障がい者等に対し、交付しなければならない。
16 指定行動援護の基本取扱方針
・提供するサービスは、利用者が居宅において自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、利用者の身体その他の状況及びその置かれている環境に応じ適切に提供されなければならない。
・事業者は、提供されたサービスについては、目標達成の度合いや利用者の満足度等について常に評価を行うともに、行動援護計画の見直しを行うなど、その改善を図らなけばならない。
17 指定行動援護の具体的取扱方針
・サービスの提供に当たっては、行動援護計画に基づき、利用者が日常生活を営むのに必要な援助を行っていること。
・サービスの提供に当たっては、懇切丁寧に行うことを旨とし、利用者又はその家族に対し、サービスの提供方法等について、理解しやすいように説明を行っていること。
・サービスの提供に当たっては、介護技術の進歩に対応し、適切な介護技術をもって提供を行っていること。
・常に利用者の心身の状況、その置かれている環境等の的確な把握に努め、利用者又はその家族に対し、適切な相談及び助言を行っていること。
18 行動援護計画の作成
・サービス提供責任者は、利用者又は障がい児の保護者の日常生活全般の状況及び希望等を踏まえて、具体的なサービス内容等を記載した行動援護計画を作成しなければならない。
・サービス提供責任者は、特定相談支援事業者等が作成したサービス等利用計画を踏まえて、行動援護事業所以外の保健医療サービス又はその他の福祉サービス等との連携も含め、行動援護計画の原案を作成し、行動援護計画に基づく支援を実施しなければならない。
・サービス提供責任者は、行動援護計画の目標や内容等について、利用者及びその家族に、理解しやすい方法で説明を行うとともに、その実施状況や評価についても説明を行わなければならない。
・行動援護計画の作成に当たっては、利用者の状況を把握・分析し、行動援護の提供によって解決すべき課題を明らかにし、これに基づき、援助の方向性や目標を明確にし、担当する従業者の氏名、従業者が提供するサービスの具体的内容、所要時間、日程等を明らかにしなければならない。
・サービス提供責任者は、行動援護計画を作成した際は、利用者及びその同居家族にその内容を説明するとともに、これを交付しなければならない。
・サービス提供責任者は、行動援護計画作成後においても、行動援護計画の実施状況の把握を行い、必要に応じて行動援護計画の変更を行わなければならない。また、サービス提供責任者は、他の従業者の行うサービスが行動援護計画に沿って実施されているかについて把握するとともに、助言、指導等必要な管理を行わなければならない。
・行動援護計画に変更のあった場合、上記に準じて取り扱わなければならない。
19 同居家族に対するサービス提供の禁止
・ 利用者が従業者の同居の家族である場合、利用者に対するサービスを提供させてはならない。
20 緊急時等の対応
・事業所の従業者は、サービスの提供を行っているときに利用者に病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、運営規程に定められた緊急時の対応方法に基づき、速やかに医療機関への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない。
21 支給決定障がい者等に関する市町村への通知
・事業者は、サービスを受けている支給決定障がい者等が偽りその他不正な行為によって介護給付費の支給を受け、又は受けようとしたときは、遅滞なく、意見を付してその旨を区市町村に通知しなければならない。
22 管理者及びサービス提供責任者の責務
・管理者は、事業所の従業者及び業務の管理を一元的に行わなければならない。
・管理者は、事業所の従業者に、都条例155(指定障がい福祉サービス条例)第2章の規定を遵守させるために必要な指揮命令を行わなければならない。
・サービス提供責任者は、18に規定する業務のほか、事業所に対するサービスの利用の申込みに係る調整、従業者に対する技術指導等のサービスの内容の管理等を行わなければならない。
23 運営規程
・事業者は、事業所において、次に掲げる事業の運営についての重要事項に関する運営規程を定めなければならない。
(1)事業の目的及び運営の方針
(2)従業者の職種、員数及び職務の内容
(3)営業日及び営業時間
(4)指定行動援護の内容並びに支給決定障がい者等から受領する費用の種類及びその額
(5)通常の事業の実施地域
(6)緊急時等における対応方法
(7)事業の主たる対象とする障がいの種類を定めた場合には当該障がいの種類
(8)虐待の防止のための措置に関する事項
(9)その他事業の運営に関する重要事項
24 勤務体制の確保等
・利用者に対し、適切なサービスを提供できるよう、事業所ごとに、従業者の勤務の体制を定めておかなければならない。原則として月ごとの勤務表を作成し、従業者については、日々の勤務時間、職務の内容、常勤・非常勤の別、管理者との兼務関係、サービス提供責任者である旨等を明確しなければならない。
・事業所ごとに、事業所の従業者によってサービス提供を行わなければならない。従業者は雇用契約その他の契約により、事業所の管理者の指揮命令下にある従業者であること。
・従業者の資質の向上のために、研修の機会を確保しなければならない。研修機関が実施する研修や事業所内の研修への参加の機会を計画的に確保しなければならない。
25 衛生管理等
・事業者は、事業所の従業者の清潔の保持及び健康状態について、必要な管理を行っていること。
・事業者は、事業所の設備及び備品等について、衛生的な管理に努めていること。手指を洗浄するための設備や使い捨ての手袋等感染を予防するための備品等を備えるなど対策を講じていること。
26 掲示
・事業者は、事業所の見やすい場所に、運営規程の概要、従業者の勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を掲示しなければならない。
27 秘密保持等
・管理者及び従業者は、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならない。
・事業者は、従業者及び管理者であった者が、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない。
・事業者は、他の同行援護事業者等に対して、利用者又はその家族に関する情報を提供する際は、あらかじめ文書により当該利用者又はその家族の同意を得ておかなければならない。
28 情報の提供等
・事業者は、サービスを利用しようとする者が、適切かつ円滑に利用することができるように、当該事業者が実施する事業の内容に関する情報の提供を行うよう努めていること。
・事業者について広告をする場合は、その内容が虚偽又は誇大なものとなっていないこと。
29 利益供与等の禁止
・事業者は、一般相談支援事業者・特定相談支援事業者やその従業者に対して、利用者又はその家族に対して当該事業者を紹介することの対償として、金品その他の財産上の利益を供与していないこと。
・事業者は、一般相談支援事業者・特定相談支援事業者やその従業者から、利用者又はその家族を紹介することの対償として、金品その他の財産上の利益を収受していないこと。
30 苦情解決
・利用者又はその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない。
・苦情を受け付けた場合には、苦情の内容等を記録しなければならない。
・事業者は、利用者又はその家族からの苦情に関して区市町村が行う調査に協力し、区市町村から指導又は助言を受けた場合は、指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
・事業者は、都道府県知事、区市町村又は区市町村長から求めがあった場合には、改善内容を都道府県知事、区市町村又は区市町村長に報告しなければならない。
・事業者は、運営適正化委員会が行う調査又はあっせんにできる限り協力しなければならない。
31 事故発生時の対応
・利用者に対するサービスの提供により事故が発生した場合は、都道府県、区市町村、利用者の家族等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。
・利用者に対するサービスの提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない。
32 会計の区分
・事業者は、各事業所において経理を区分するとともに、居宅介護の事業の会計とその他の事業の会計とを区分していること。
33 記録の整備
・事業者は、従業者、設備、備品及び会計に関する記録を整備しなければならない。
・利用者に対するサービスの提供に関する諸記録を整備し、サービスを提供した日から5年間保存しなければならない。