行動援護

当記事では、これから行動援護事業を開設する方に向けて、行動援護のサービス内容や指定の要件など、指定申請を行う前に知っておきたい情報をまとめました。

障がい者の状況に合った適切なサポートを行い、自立した生活を送れるように支援する障がい福祉サービス事業者は、障がい者の生活を支える大切な存在です。

ぜひ参考にしてください。

行動援護とは

行動援護とは?

行動援護とは、知的障がい者や精神障がいにより、自分一人で行動することが困難であり、常に介護を必要とする方に対して、行動する時に生じる危険回避、外出時における移動の介護、着替えの補助、外出先での排せつや食事の介助など、行動をする際に必要な援助を行います。

行動援護のサービス内容

予防的対応
初めての場所で不安定になったり、不安を紛らわすために不適切な行動を起こさないように不安を取り除く対応
制御的対応
行動障がいを起こしてしまった時の問題行動を適切におさめる
身体介護的対応
便意の認識ができない方の介助や後始末の対応、外出中の食事介助、衣服の着脱介助

行動援護は、サービス利用者が自宅において自立した日常生活、社会生活を送れるように、身体の状況や置かれている環境に応じて、利用者が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援助を適切かつ効果的に行うためサービスです。

行動援護の対象者

  • 障がい支援区分が区分3以上であって、障がい支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上である者。
  • 18歳未満の障がい児は、上記に相当する支援の度合であること。

障がい支援区分とは?

障がい者に対する標準的な支援の度合を総合的に示す区分のことで、障がいの度合いに応じて区分1から区分6までの6段階で認定されます(区分6の方が重度の障がい)。

認定にあたっては、障がい者の特性をふまえた判定が行われるように全国一律で定められた80項目の認定調査結果や医師の意見書を踏まえて、最終的に市町村における審査会で認定されます。

サービス利用者は、認定された障がい支援区分に応じて、サービスの提供を受けることができます。

障がい支援区分とは?

行動援護を行うための基準

基準

行動援護事業をはじめるためには、行動援護事業を行うための人員や設備、運営などに関する基準を満たして都道府県(地域によっては市)に申請を行い、事業者としての指定を受けて「指定事業者」となる必要があります。

指定基準は大きくわけて4つあり、そのすべてを満たす必要があります。

  1. 法人格を有すること
  2. 人員基準を満たすこと
  3. 設備基準を満たすこと
  4. 運営基準を満たすこと

この基準は申請時だけでなく、指定を受けた後も満たし続ける必要があります。

指定後に万一基準を満たすことができなかった場合は、指定が取り消されることもありますので、注意してください。

指定基準は、指定を受ける都道府県等によって独自の基準を設けていることもありますので、事前に開業予定地の都道府県等に確認しておきましょう。

法人格を有すること

行動援護事業を行う申請者は、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人などの「法人」であることが必要です。

個人(個人事業)では申請できませんので、指定申請を行う前に法人を立ち上げる必要があります。

また、法人の定款の目的の中に「行動援護事業」を行うための適切な文言が記載されている必要があります。

目的の表記については、申請先の都道府県等により具体的に「このように記載してください」と指定されていることがありますので、事前に開業予定地の申請窓口へ確認しておきましょう。

障がい福祉サービス事業を行う法人の定款事業目的について

人員基準を満たすこと

行動援護事業を行うには、1.管理者、2.サービス提供責任者、3.従業者(ヘルパー)を置かなければなりません。

申請時点で必要な人員が確保できている必要があり、指定後においても実際にサービス利用者がいるかどうかに関わらず、必要な人員を確保するなど、基準を遵守しておく必要があります。

管理者

管理者には資格要件はありませんが、適切なサービスを提供するために必要な知識及び経験を有する者でなければなりません。

管理者としてふさわしい人物を配置する必要があります。

配置基準
1人。
常勤かつ専従であり、管理業務に従事する者。
「専従」とは、原則としてサービス提供時間を通じて、そのサービス以外の職務に従事しないことをいいます。
ただし、管理業務に支障がないと判断できる場合は、例外的に兼務が認められています。
資格要件
なし

サービス提供責任者

サービス提供責任者は、サービスのプランニングからヘルパーへの業務指示や指導・育成まで行うサービス提供部門の指導的立場にある人で「サ責」とも呼ばれています。

サービス利用者とヘルパーや相談支援専門員のパイプ役となり、適切なサービスが提供されるように調整します。

配置基準

1人以上。
必要人員、事業規模に応じて常勤かつ専従の者。
下記の1.2.3.より算定した数のいずれか「低い方」の基準以上を置くこと。

  1. 業所の月間のサービス提供時間が450時間又はその端数を増すごとに1人以上
  2. 事業所の従業者の数が10人又はその端数を増すごとに1人以上
  3. 事業所の利用者の数が40人又はその端数を増すごとに1人以上
資格要件

「次の研修を修了していること」+知的障がい児者又は精神障がい者の直接支援業務に3年以上従事した実務経験がある者

  • 行動援護従事者養成研修修了者
  • 強度行動障がい支援者養成研修修了者(基礎研修及び実践研修)

従業者(ヘルパー)

ヘルパーは、実際に利用者に対して必要なサービスを提供します。ホームヘルパー、訪問介護員、サービス提供職員などとも呼ばれています。

配置基準
常勤換算で2.5人以上
常勤換算とは、全従業員の労働時間を常勤の人が何人働いているかに換算した時の人数を示した数字です。
基本的には、すべての従業員の労働時間を足し、フルタイムの労働時間で割ることで、「通常何人で働いているか」を示します。

常勤換算とは?

資格要件

「次の研修を終了していること」+知的障がい児者又は精神障がい者の直接支援業務に1年以上従事した実務経験がある者

  • 行動援護従事者養成研修終了者
  • 強度行動障がい支援者養成研修終了者(基礎研修及び実践研修)

設備基準を満たすこと

事業の運営を行うために必要な設備(事業所)を設ける必要があります。

事務室

具体的に○○㎡以上などといった規定はありませんが、管理者や従業者の人数に相当する事務机や椅子、書類や備品などを収納するための書庫が収容できる程度の広さが必要です。

原則は専用の事務室が必要になりますが、他の事業と共用する場合は、事務机を完全に分けるなど明確に区分されていれば、同一の事務室であっても差し支えありません。

相談室

具体的に○○㎡以上などといった規定はありませんが、利用申し込みの受付や相談に対応するために適切な広さが必要です。

サービス利用者などが相談に訪れた際に、プライバシー保護の観点から個室が望ましいとされていますが、パーテーションを利用して仕切ることもできます。

設備・備品

事務室や相談室で利用する事務机や椅子、電話、FAX、パソコン、プリンター、鍵付の書庫などが必要です。

また、感染症予防のため洗面所には、ハンドソープやペーパータオル、アルコール消毒液を設置します。

運営基準を満たすこと

運営基準とは、適切なサービスを提供するにあたって行動援護事業者が行わなければならない事項や留意すべき事項など、事業を実施する上で求められる運営上の基準です。

行動援護事業の運営基準は多数ありますが、その多くは指定申請後に満たすべき基準になっています。

また、運営基準プラス独自の基準を設けている都道府県等もあります。

運営に関する基準
  1. 内容及び手続きの説明及び同意
  2. 契約支給量の報告等
  3. 提供拒否の禁止
  4. 連絡調整に対する協力
  5. サービス提供困難時の対応
  6. 受給資格の確認
  7. 介護給付費の支給の申請に係る援助
  8. 心身の状況等の把握
  9. 指定障がい福祉サービス事業者等との連携等
  10. 身分を証する書類の携行
  11. サービスの提供の記録
  12. 支給決定障がい者に求めることのできる金銭の支払の範囲等
  13. 利用者負担額等の受領
  14. 利用者負担額に係る管理
  15. 介護給付費の額に係る通知等
  16. 指定行動援護の基本取扱方針
  17. 指定行動援護の具体的取扱方針
  18. 行動援護計画の作成
  19. 同居家族に対するサービス提供の禁止
  20. 緊急時等の対応
  21. 支給決定障がい者等に関する市町村への通知
  22. 管理者及びサービス提供責任者の責務
  23. 運営規程
  24. 勤務体制の確保等
  25. 衛生管理等
  26. 掲示
  27. 秘密保持等
  28. 情報の提供等
  29. 利益供与等の禁止
  30. 苦情解決
  31. 事故発生時の対応
  32. 会計の区分
  33. 記録の整備

行動援護の運営基準【東京都】