訪問看護とは
「訪問看護」とは、看護師・准看護師などの資格を持った看護の専門職が利用者の自宅を訪問して、療養上必要な世話や医療行為を行うサービスです。
病気や障害を持った方が住み慣れた地域や家庭で、適切な医療や看護ケアが受けられることで、その人らしい療養生活を送ることができるように支援します。
訪問看護のサービス内容
訪問看護で受けられるサービス内容は、医師の指示書のもとに行われます。
- 医師の指示による医療処置
- 医療機器の管理
- 病状の確認や点滴、医療機器の管理
- 床ずれの処置、予防
- 介護予防
- リハビリテーション
- ターミナルケア
- 家族への介護指導・相談 など
訪問看護のサービスは医師の指示書のもとに行われますので、介護サービスのように買い物や家事の代行など、看護以外のサービスは提供されません。
訪問看護の対象者
要支援、要介護の認定を受けている方が対象です(介護保険適用)。
要支援または要介護の認定を受けた方が訪問看護を利用するには、ケアマネジャーに相談をしてサービス計画を立ててもらいます。そして、主治医の指示書により看護師や准看護師などが医療的ケアを提供します。
訪問看護を行うための基準
訪問看護事業(訪問看護ステーション)を始めるためには、訪問看護介護事業を行うための人員や設備、運営などに関する基準を満たして都道府県(地域によっては市)に申請を行い、事業者としての指定を受けて「指定事業者」となる必要があります。
指定基準は大きくわけて4つあり、そのすべてを満たす必要があります。
- 法人格を有すること
- 人員基準を満たすこと
- 設備基準を満たすこと
- 運営基準を満たすこと
また、この基準は申請時だけでなく、指定を受けた後も満たし続ける必要があります。
指定後に基準を満たすことができなかった場合は、指定が取り消されることもありますので、注意してください。
指定基準は、指定を受ける都道府県等によって独自の基準を設けています。事前に開業予定地の都道府県等に確認しておきましょう。
法人格を有すること
訪問看護事業を行うには、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人などの「法人」であることが必要です。
法人の種別は問われませんが、法人を設立してからでなければ申請をすることができません。また、法人の定款の目的には「訪問看護事業」を行うための適切な文言が記載されている必要があります。
例えば、「介護保険法に基づく訪問看護事業」です。目的に記載がない場合は、あらかじめ目的を変更するための登記手続きを行わなければなりません。
目的の記載方法は、申請先(都道府県や市)により具体的に「このように記載してください」と指定されていることがありますので、事前に開業予定地の申請窓口へ確認しておきましょう。
人員基準を満たすこと
訪問看護事業を行うには、必要な人員を置かなければなりません。
申請時点で必要な人員が確保できている必要がありますが、指定後においても、実際にサービス利用者がいるかどうかに関わらず、人員を確保していることが求められています。
管理者
管理者は、利用者へ適切な訪問看護をおこなうための知識や技能を有する者でなければなりません。
- 配置基準
- 1人。
常勤であり、原則として専ら職務に従事する者。 - 資格要件
- ・保健師・看護師・医療機関における看護、訪問看護又は訪問指導の業務に従事した経験のある者等
看護職員
看護職員は実際に利用者の自宅を訪問して、必要なサービスを提供する人です。看護職員は、有資格者であることが必要です。
- 配置基準
- 常勤換算で2.5人以上(内1名は常勤)
訪問介護員の合計勤務時間が常勤の職員で2.5人以上。例えば、常勤の職員が週40時間勤務の事業所の場合、週40時間/人×2.5人分=週100時間以上確保しなくてはなりません。 - 資格要件
- ・保健師・看護師・准看護師
理学療法士など(配置しないことも可)
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問看護を実施する場合に、実情に応じた適当数を配置します。
- 配置基準
- 実情に応じた適当数
- 資格要件
- ・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
設備基準を満たすこと
訪問看護の事業の運営を行うために必要な事務室、相談室を設けるほか、必要な設備及び備品等を備えなければなりません。
訪問看護と介護予防訪問看護を同一事業所で同時に事業を実施することができます。この場合、介護予防訪問看護の人員基準、設備基準を満たしていれば、訪問看護の人員基準、設備基準を満たしたものとします。
事務室
職員数分の机・椅子、書類などを収納するための鍵付きの書庫、その他必要な備品が収容できる程度の広さが必要です。
相談室
利用申し込みの受付や相談に対応するために適切な広さが必要です。利用者などが相談に訪れた際に、プライバシー保護の観点から個室が望ましいとされていますが、パーテーションを利用して仕切ることもできます。
設備・備品
- 机、椅子、パソコン、電話、FAX、プリンター、鍵付き書庫など
- 消毒液、ハンドソープ、ペーパータオルなど
運営基準を満たすこと
運営基準とは、適切なサービスを提供するにあたって訪問看護事業者が行わなければならない事項や留意すべき事項など、事業を実施する上で求められる運営上の基準です。
運営基準は多数ありますが、その多くは指定申請後に満たすべき基準になっています。また、運営基準プラス独自の基準を設けている自治体もあります。
運営に関する基準
- 運営に関する基準項目:例
-
- 内容及び手続の説明及び同意
- 提供拒否の禁止
- 提供困難時の対応
- 受給資格の確認
- 心身の状況等の把握
- 保健医療サービス提供者等との連携
- 身分を証する書類の携行
- 利用料
- 指定訪問看護の基本取扱方針
- 指定訪問看護の具体的取扱方針
- 主治の医師との関係
- 訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成
- 利用者に関する市町村への通知
- 緊急時等の対応
- 管理者の責務
- 運営規程
- 勤務体制の確保等
- 業務継続計画の策定等
- 衛生管理等
- 掲示
- 秘密保持等
- 広告
- 苦情処理
- 事故発生時の対応
- 会計の区分
- 記録の整備
- 事業報告
申請に必要となる書類の例(東京都の場合)
訪問看護の指定申請に必要となる書類の例を掲載しました。
指定権者である自治体によって、必要な書類の種類や内容は異なります。
事前に自治体HPを確認したり、申請窓口に問い合わせをしたりして、必要な書類を確定させてから、書類の収集や作成に入るとスムーズです。
ここでは、東京都に申請を行う場合の必要書類の一覧を掲載しています。
- 指定申請書
- 訪問看護・介護予防訪問看護事業所の指定等に係る記載事項
- 申請者の登記事項証明書又は条例等(法人以外の者が開設する病院・診療所である場合を除く)
- 病院の使用許可証、診療所の使用許可証又は届出等の写し(病院・診療所で実施する場合)
- 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
- 資格証の写し
- 事業所の平面図(外観及び内部の様子がわかる写真など)
- 運営規程(料金表含む)
- 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
- 誓約書及び誓約書別紙
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書、体制等状況一覧表、加算様式・参考様式(加算を算定する場合のみ)