解説

訪問介護とは

「訪問介護」とは、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問して、食事・排泄・入浴などの介護や、掃除・洗濯・買い物・調理などの支援をするサービスで「ホームヘルプ」とも呼ばれています。

利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるように生活をサポートします。

訪問介護のサービス内容

訪問介護で受けられるサービス内容は「身体介護」と「生活援助」があります。

  1. 身体介護
    ・食事の際の介助
    ・入浴の際の介助、入浴ができない場合の清拭
    ・トイレの介助、おむつの交換
    ・着替えの介助、移動の際の歩行介助
    ・床ずれ予防のための体位変換
    ・その他の必要な身体の介護
  2. 生活援助
    ・生活用品、食材の買い物
    ・食事の用意(調理、配膳、片づけ等)
    ・掃除、ゴミだし
    ・洗濯(洗う、干す、たたむ、整理等)
    ・その他必要な家事

訪問介護の対象者

要介護1から5の認定を受けた人が対象です。

要支援1・要支援2の認定を受けている方は、訪問介護に相当する「介護予防・生活支援サービス」を受けることができます。

訪問介護を行うための基準

訪問介護事業を始めるには、訪問介護事業を行うための人員や設備、運営などに関する基準を満たして都道府県(地域によっては市)に申請を行い、事業者としての指定を受けて「指定事業者」となる必要があります。

指定基準は大きくわけて4つあり、そのすべてを満たす必要があります。

  1. 法人格を有すること
  2. 人員基準を満たすこと
  3. 設備基準を満たすこと
  4. 運営基準を満たすこと

また、この基準は申請時だけでなく、指定を受けた後も満たし続ける必要があります。

指定後に基準を満たすことができなかった場合は、指定が取り消されることもありますので、注意してください。

指定基準は、指定を受ける都道府県等によって独自の基準を設けています。事前に開業予定地の都道府県等に確認しておきましょう。

法人格を有すること

訪問介護事業を行うには、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人などの「法人」であることが必要です。

法人の種別は問われませんが、法人を設立してからでなければ申請をすることができません。また、法人の定款の目的には「訪問介護事業」を行うための適切な文言が記載されている必要があります。

例えば、「介護保険法に基づく訪問介護事業」です。

目的の記載方法は、申請先(都道府県や市)により具体的に「このように記載してください」と指定されていることがありますので、事前に開業予定地の申請窓口へ確認しておきましょう。

人員基準を満たすこと

訪問介護事業を行うには、必要な人員を置かなければなりません。

申請時点で必要な人員が確保できている必要がありますが、指定後においても、実際にサービス利用者がいるかどうかに関わらず、人員を確保していることが求められています。

管理者

管理者は、利用者へ適切なサービスを提供するために必要な知識及び経験を有する者でなければなりません。

配置基準
1人。
常勤であり、原則として専ら当該訪問介護事業に従事する者。
ただし、管理業務に支障がないと認められる場合、他の職務を兼ねることができます。
資格要件
なし

サービス提供責任者

サービス提供責任者は、ケアプランに基づいて「訪問介護計画書」を作成し、利用者へ適切なケアが提供されるようにヘルパーに指示を与える人です。

「サ責」とも呼ばれ、訪問介護サービスの重要な役割を担っています。常勤の訪問介護員のうち、1人以上の者をサービス提供責任者としなければなりません。

配置基準
事業所の利用者の数が40人又はその端数を増すごとに1人以上
資格要件
・介護福祉士 ・実務者研修修了者・旧ホームヘルパー1級等

訪問介護員(ホームヘルパー)

訪問介護員は実際に利用者の自宅を訪問して、必要なサービスを提供する人です。ホームヘルパーとも呼ばれています。訪問介護員は、有資格者であることが必要です。

配置基準
常勤換算で2.5人以上
訪問介護員の合計勤務時間が常勤の職員で2.5人以上。例えば、常勤の職員が週40時間勤務の事業所の場合、週40時間/人×2.5人分=週100時間以上確保しなくてはなりません。
資格要件
・介護福祉士 ・実務者研修修了者 ・初任者研修修了者・旧ホームヘルパー2級相当以上の者等

同一事業所において、管理者とサービス提供責任者は兼任することができますので、訪問介護員(ホームヘルパー)と合わせて頭数で最低3人以上の人員を確保する必要があります。

設備基準を満たすこと

訪問介護の事業の運営を行うために必要な事務室、相談室を設けるほか、必要な設備及び備品等を備えなければなりません。

事務室

広さの規定はありませんが、管理者やサービス提供責任者の人数分以上の机・椅子、書類や備品などを収納するための鍵付きの書庫が収容できる程度の広さが必要です。

相談室

広さの規定はありませんが、利用申し込みの受付や相談に対応するために適切な広さが必要です。
サービス利用者などが相談に訪れた際に、プライバシー保護の観点から個室が望ましいとされていますが、パーテーションを利用して仕切ることもできます。

設備・備品

事務室や相談室で利用する机・椅子、鍵付の書庫、電話・FAX、パソコン、コピー機などが必要です。また、感染症予防のため玄関脇や洗面所には、ハンドソープやペーパータオル、アルコール消毒液を設置します。

運営基準を満たすこと

運営基準とは、適切なサービスを提供するにあたって訪問介護事業者が行わなければならない事項や留意すべき事項など、事業を実施する上で求められる運営上の基準です。

運営基準は多数ありますが、その多くは指定申請後に満たすべき基準になっています。また、運営基準プラス独自の基準を設けている自治体もあります。

運営に関する基準項目:例
  1. 内容及び手続の説明及び同意
  2. 提供拒否の禁止
  3. サービス提供困難時の対応
  4. 受給資格等の確認
  5. 要介護認定・要支援認定の申請に係る援助
  6. 心身の状況等の把握
  7. 居宅介護支援事業者・介護予防支援事業者等との連携
  8. 居宅サービス計画に沿ったサービスの提供
  9. 居宅サービス計画の変更の援助
  10. 身分を証する書類の携行
  11. サービス提供の記録
  12. 利用料等の受領
  13. 保険給付の請求のための証明書の交付
  14. 指定訪問介護サービスの基本取扱方針
  15. 指定訪問介護の具体的取扱方針
  16. 訪問介護計画の作成
  17. 家族に対するサービス提供の禁止
  18. 利用者に関する市町村への通知
  19. 緊急時等の対応
  20. 管理者の責務
  21. サービス提供責任者の責務
  22. 運営規程
  23. 介護等の総合的な提供
  24. 勤務体制の確保等
  25. 業務継続計画の策定等
  26. 衛生管理等
  27. 掲示
  28. 秘密保持等
  29. 広告
  30. 不当な働きかけの禁止
  31. 居宅介護支援事業者に対する利益供与の禁止
  32. 苦情処理
  33. 地域との連携
  34. 事故発生時の対応
  35. 虐待の防止
  36. 会計の区分
  37. 記録の整備