はじめに
訪問介護は社会に欠かせない重要なサービスです。しかし、現場では移動時間や待機時間などの労働時間の適正な管理や賃金の算定が十分に行われていない場合が見受けられます。
厚生労働省のガイドラインに基づき、事業所が法定労働条件を適切に確保するための重要ポイントを解説します。
厚労省リーフレット:訪問介護労働者の法定労働条件の確保のために
労働条件の明示
訪問介護員と雇用契約を締結する際、賃金や労働時間、休憩、休日、業務内容を書面で明示しなければなりません。
契約内容が曖昧なままでは後のトラブルの原因となりますので、書面で伝えることが重要です。
※なお、書面の交付が義務付けられている明示事項について、労働者の希望がある場合に限り、ファクシミリ、電子メール等の送信による明示が認められます。希望がない場合は、書面交付が原則になります。
労働時間の把握
訪問介護の労働時間には、移動時間や待機時間も含まれる場合があります。
例えば、利用者宅間の移動時間や事業所での待機時間は、事業所(以下、「使用者」とします)の指示下にあり、その時間を自由に利用できない場合、労働時間とみなされます。
- 利用者A宅からB宅へ移動する時間
- 使用者の指示により事業所で待機している時間
事業者はこれらを適正に把握し、賃金を支払う必要があります。
待機時間について
待機時間については、使用者が急な需要等に対応するため事業上等において待機を命じ、当該時間の自由利用が訪問介護員等に保障されていないと認められている場合には、労働時間に該当するとされています。
休業手当の支給
利用者の都合によるキャンセル等で訪問介護業務が発生しない場合でも、使用者の責に帰す事由であれば、休業手当として平均賃金の60%以上を支払わなければなりません。
年次有給休暇の付与
雇用から6か月経過し、出勤率が8割を超えた労働者には年次有給休暇を付与する義務があります。
また、年10日以上の年次有給休暇が付与されている訪問介護員等に対して、年次有休休暇の日数のうち、年5日分については、使用者が時季を指定して取得させる必要があります。
就業規則の作成と周知
常時10人以上の労働者を雇用する事業所は、就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出なければなりません。また、内容は労働者に周知徹底することが求められます。
安全衛生対策の実施
訪問介護は腰痛や感染症リスクの高い業務です。雇入れ時や作業内容変更時には、安全衛生教育を行い、災害防止のための対策(腰痛予防、感染症防止など)を徹底しましょう。
労働保険の手続き
事業所で労働者を1人でも雇用する場合、労災保険および雇用保険の適用手続きが必要です。労働者の安心・安全のためにも、適正な保険加入を行いましょう。
まとめ
訪問介護事業所が労働条件を適正に確保することは、事業運営の安定化につながります。労働条件の明示、労働時間の管理、有給休暇の確保、就業規則の整備など、法令を順守し、働きやすい環境を実現しましょう。厚生労働省のガイドラインを参考に、今一度、職場の労働条件を確認し、労使トラブルを未然に防ぎましょう。